威勢の良い掛け声と共に、大きな巨石がゆらゆらと動く。その度見物人の間から歓声が上がり、修羅と呼ばれる押し車を引く普請場の男達の間に一層熱気がこもる。
 長浜と名の改められたこの場所は、新しい城主を迎え今まで以上の賑わいを見せていた。その証拠の一つが新しい城を普請しているこの工事場だ。
 信じられないような巨大な石がゆるゆると動いてゆく様は、人々の目にも物珍しい。しかもその上、城の城主自らが普請現場を開放して、市井のものどもが見物できるように計らっている。当然これはいい見せ物であると人々は足を運び、その見物客を当て込んだ屋台や露店までが並ぶ始末だ。普請現場はまるで祭りの様相をもって賑わい、それを一目見ようと、人は人を呼び、城下そのものが一層活気づいていた。
 勿論のことこのように普請場を公開することは、良いことばかりではない。他国の草や間者も堂々と入り込むであろうし、重要な普請の機密が漏れる可能性もある。しかしそれをおしてもこのように丁場を公開する事には利があると踏んで、新しい城主はこの思い切った方法で城下を活気付けようと試みたのだった。
 そしてその新しい城主は、と言えば。
「ほーれ、そーいや〜そーいやぁあ!」
 巨大な石がゆらゆら動くその上で、片肌を脱ぎ身の丈に合わない扇を持って、ひょうげた仕草でそれを振っている小柄な人影が一つ。 扇が揺れるその調子に合わせて、めちゃくちゃな節で何やら調子っ外れな唄を歌っている。その人物が何を隠そうこの城の主、羽柴秀吉だ。
 見物人もまさかこの人物が城主であるとは夢にも思わないだろう。
 ぴょんぴょんと扇を持って飛び回るその仕草に、人々の輪からはどっと笑いが起こる。笑い、そして歓声は、普請場の男達のやる気をも上調子にしていて、場の空気は人々の熱気や期待を多くはらんでいた。これから新しい城主の元、長く栄えるであろうこの町の将来を思って。

 そうして人々が歓声を上げて石運びを眺めるその後ろ、どうにも周りからは浮いた姿が一つ。
 黒の旅装束に編み笠姿のそれは、ごく一般的な旅人の装いだ。しかし近づけばどうにも違う。巨躯はどう見ても町人とは思えぬ体つきであるし、隙のない身のこなしは武を嗜むもののそれだ。この時勢に浪人は珍しくないもではあるが、しかし身から放たれる気配がまたただの浪人とも違う。どのように他に埋没するよう装ったとしても目立ってしまう、何が違うとも言えぬが、異質であるとしか言えぬ、そのような気を放つ人物である。
 人々の後ろ、普請を眺めていたその人物はふいと興味を失ったように視線を逸らすと、見物人の犇めく一角に背を向ける。足を向けた先は、丁度普請場からは裏に当たる人気の少ない区画だ。そこには川と湖を使って運び込まれた巨石がこれからの出番をまって静かに鎮座してた。辺りには人気はなく、少し離れたあちら側では賑やかな普請が続いていて、遠く人々のざわめきが聞こえてくる。
 旅装束の男は無造作に転がる巨石に、何気なく手を伸ばした。
 と、しかしその手は石に届く前に、鋭く掛けられた声にぴたりと動きを止める。
「何、してンんだよ!!」
 男が声の方へと目をやると、そこには憮然とした表情の子供の姿がある。着ているものはごく普通の、その辺りの童と変わらない。悪たれと言っていいような表情をして、もう一度何してんだって聞いてるだろ!と大きな声を上げる。
 子犬が威嚇するのにも似たその様子に、喉奥で小さく笑い、男は石に伸ばしていたその手を引いた。
「そう言うおぬしは何をしておる」
「見張り番だ!」
「ほう、それは誰に言われて、ぞ」
「そりゃあ決まってんだろ、叔父貴さ!」
「叔父貴、とは」
「叔父貴は叔父貴だ、城主様になンだよ!あれ、もうなったんだっけ?」
 男がその子供との問答を楽しむように続けていれば、騒ぎを聞きつけたのか石の間から、別の小さな影が二つ、姿を見せる。
「何を騒いでるんだ、馬鹿」
「少しは静かに役目を全うしろ」
 姿を見せた影は更に二人の子供で、どうやら先に話しかけてきた子供の連れのようだ。 珍しい白銀の髪の子供と、一見女童のように見える茶髪の子供、その二人は口々に先の少年を攻めながら、しかしその傍らにぴたりと寄り添い、男を見上げている。警戒しているのだ。
「おぬしらの役目は、石の見張りか」
「そうだぜ!」
「馬鹿、なんで言っちまうんだ」
「馬鹿に駆け引きなぞ無理な話だな」
「んだとぉ頭デッカチ!」
 三人寄ればいつもこの調子なのか、目の前に居る男のことも忘れて言い争いが繰り広げられる。くく、と喉の奥でもう一度笑い男が視線を上げると、普請場の方から、だぁ〜っと全力で駆けてくる人物の姿が見えた。
「遅い、サルめが」
 それを見て男が呟くその言葉は、まだ言い争いをしている子供達の耳には届いていない。そうこうしている間に全力疾走で駆けてきた人物は、荒い息もそのままに男と子供たちの目の前に割り入った。
「こりゃあ、おんしら、何を、しとるんじゃ!」
 息を切らせたその人物は先ほど石の上で踊っていた姿そのままで、はぁはぁと肩を上下させている。そしてそのままばっ、と男に頭をさげようとして、しかしぴたりと動きを止めた。
「よい」
「・・・も、申し訳ありませぬ」
 何なんだよ叔父貴、何なのです秀吉様、子供たちが口々にするその言葉をなだめすかしながら、秀吉様、と呼ばれた城主は疲れきった様相で流れる汗を掌で拭う。
「このお方はわしの客人じゃ、だからなんも問題はないんじゃ、お前達は役目を続けてくれや」
 えー、と口々に声を上げながら、それでもしぶしぶと子供たちはその場を後にする。途中、茶髪の子供だけが何度もこちらを振り返り、なんとも納得できないと言った表情でこちらを見ていた。その様を見て、秀吉ははぁと息を吐く。
「申し訳ありませぬ、佐吉は賢い分どうにも誤魔化すのに骨が折れまして」
「よい」
 改めて深く頭を下げようとしたその動作を男は制する。
「サルめが頭を下げる人物は、ここには居らぬはずである、そう言う事であるな」
「・・・全く持って、お人が悪い」
 石の上からお姿を見つけた時は、わしゃあ、寿命が縮まる思いでしたわ。笑いながらそう秀吉が告げ、それに男も表情を緩めた。
「お忍びなどと、もうそのようなお立場ではありますまいに信長様」
 さぞ蘭丸殿が気をもんでらっしゃるでしょうなぁと、ちくりと含みを持たせながら秀吉はただ一人の主へと視線を向けた。
「あのような童どもに見張り、とは」
「夜はちゃんとした兵に見張らせとりますが、昼間は何分見物人の目もありますので、あの子らに頼んでおりまする。石垣は城の要、間者に何ぞ細工でもされては叶いませぬのでな。その処を子らも理解はしておるようでして」
 それゆえの無礼である、申し訳ないと今度こそ秀吉は深く頭を下げる。よい、上げよと信長の声が響いて、ようやく秀吉は顔を上げた。見上げる主の表情はどこか愉快を含んでいる。その昔まだ秀吉が藤吉朗と名乗っていた頃、よく見かけた表情だ。
「子らの無礼は許そう、しかしサルめが遅れた無礼は、あがなってもらわねば、な」
 ひえぇぇと、声を上げる秀吉の表情を覗き混み、信長が口の端を釣り上げ、嗤う。
「暫し付き合うが良い、サル」







「もう戻りませんと、信長様ぁ〜」
 秀吉の声に耳をかすこともなく、前を進む大きな背はどんどん歩を進めてゆく。信長は長浜城下の市を歩き回り、興味を引かれるものがあれば足を止め、売り子と二言三言言葉を変わり、そしてなにを得心したやらまた歩みを続ける、それを繰り返していた。
 後ろをついてゆく秀吉には分かることであったが、信長が売り子に声を掛けてゆく品、それは京流れの反であったり、また北から運び込まれた酒、塩の類である。成る程この地における物の動きを見るならば、これほど効率の良い方法もないだろう。
 一人普請場に佇んでいた時とは違い、今こうして市を歩く信長の旅姿は周囲にとけ込んでいる。何が違うのかと言えば、それはやはり後ろに続く秀吉の姿だろう。秀吉は不思議と周りにとけ込む術に長けている。その秀吉が信長の後ろをちょろちょろと動き周る様は在りし日の尾張の城下を思わせて、妙にしっくりと二人の姿を辺りに馴染ませていた。道行く人々も、まさかこの二人がこの町の城主とそのまた主であるなどと、思いもよらぬだろう。
 市を歩き回り、日も傾き掛けてきた頃合いで、秀吉はもう一度信長に声を掛ける。
「わしも普請を放り出してきておりますし、そろそろ信長様を追うてきた家中の者も探しておりましょう」
であるから、とその先を無言で促して秀吉は信長を見上げた。先を進んでいた背はその言葉に足を止め、ちらりとその表情を一別する。しかしその口から是の言葉は出ない。ふ、と口元は笑いの形にゆがむ。
 成る程今日の信長は概ね上機嫌と言って良いだろう。しかしながら、これ以上はのぅと困り果てた秀吉が頭を抱えていると、秀吉を置いて、信長はその歩みを早く進ませる。あわてて続けばその背は市を抜け、町外れ近くの裏路地へと向かっている。見失っては一大事と焦りで秀吉が歩み早めれば、角を曲がった奥に信長は立ち止まっていた。不審に思った秀吉が信長の先をのぞき込めば、路地裏に立つ遊び女がなにやら信長の袖を引き、気を引こうと笑みを浮かべ話し掛けている。
 町明かりの裏ではよくある光景で、しかしそれにしても誘う相手が誰とも知らずと、秀吉が横から口を挟み追い払おうとしたその途端、信長は懐から一分銀を取り出して、その遊び女に投げ与えた。
「ええっ、何をなさいますかあっ!!」
 声を上げた秀吉だけでなく、銀を投げられた女もあっけにとられてただ、立ち尽くしている。一分銀、どう考えてもこの遊び女が一晩で稼げるような額ではないだろう。
「代金ぞ、受け取るがよい」
 銀を投げ与えたその手で信長は遊び女の羽織っていた派手な赤い上物を奪い取る。安っぽい赤に染め抜かれたそれは、どう見ても一分銀の価値があるような物ではない。
「居ぬがよい」
 有無を言わさぬ信長の口調に、女は手の中に握った銀を見、そして信長を見て、焦ったように二人に背を向けて走り去ってゆく。女にしても訳が分からない出来事であろうが、傍らで一分始終を眺めていた秀吉ですら、さっぱり分からない。まったくもって信長と言う人物はいつまでも人の虚を突く、としか言いようがなかった。これだけ共にある秀吉がそうなのだから。
 目の前の信長は女から奪い取った上物を珍しげに眺め、ひらりひらりとそれを手の中で揺らしている。そうしてくるりと秀吉を振り返り、分かりやすく人の悪い笑みを浮かべ、こう告げた。
「子犬どもがサルを追うてきたぞ、さりとて後はぬしの役目よ」
 ひらりひらりと手の中で遊ばせていた上物を鮮やかな動作で信長は羽織る、と同時に、路地の入り口付近から騒がしい子供らの声が響いてくる。
 ええっっつ!!!と秀吉が思う間もなく、角を曲がり、石の見張りを命じていたはずの子供らが姿を表した。なるほどこの為の上物であるかと、感心しながらも必死で秀吉は子供らの元へと駆けてゆく。少しでも信長との距離をとるためだ。いくら上物を羽織っているとは言え、あの体躯では近づけばすぐに昼の人物であるとばれてしまうだろう。
「あー叔父貴、みっけー!」
「秀吉様、急に普請場を抜けられたので、おねね様も心配なさっています」
 それぞれ文句らしき言葉を口にしながら、子供らは秀吉に詰め寄ってくる。
「そういうお前達こそ、石場の見張りはどうしたんじゃ」
「夜の担当の者ととっくに交代しております」
 当然とばかりの物言いで茶髪の子供が返事を返し、そういえばもう辺りがほの暗くなっていたことにようやく秀吉は気がついた。信長に出会ってからこっち、どうにも動転していて、いつもの調子が出ないことこの上ない。
「あちらの方は」
 薄暗い路地の奥、派手な紅の上物が目に入ったのか、茶髪の子供が険しいと言って良い声色で秀吉に問いかける。
内心ひえぇぇとおののきながら、ちらりと視線を路地裏にやれば、周到というか流石と言うか、上物をすっぽりと頭から被った信長は、道端にあった置き石の上に腰掛けこちらに微妙な角度で背を向けている。腰掛けていることで体躯の大きさもごまかせるであろうし、路地裏までの距離と薄暗さが手伝って、子供らは奥に座る人物が昼間と同じ人物とは気付いていないようだった。
 えーごほん、と咳払いを一つし、秀吉は子供らに顔を近付けて、内緒話の様相で話し掛ける。
「あれな女人は、大切なお客人のお連れ様じゃ。今から宿へとご案内する処でな。・・・ねねには内緒じゃぞ」
 声を潜めて告げれば、意味が分かっているのかいないのか、へー、と素直に頷く子供が一人、おねね様には内緒ですか・・・と渋い顔をする子供が一人、あからさまに疑いの目でこちらを見る子供が一人。
 それでも強引に押し通そうと、ごほんともう一度わざとらしく咳払いをして、秀吉は子供ら三人へ向けて、ねねに今日はお客様をご案内せねばならんので遅うなると伝えてくれや、と告げた。
 ほれほれもう帰る刻限じゃと、三人の背を押して秀吉は強引に路地から追い出す。やはり気になるのか路地を出る最期まで、茶髪の子供は紅い上物の後ろ姿を見遣っていた。しかしそれでもなんとか秀吉は子供らを追い返すことに成功する。
 ようやく下りた肩の荷にため息を吐いて、秀吉は路地奥に佇む信長の元へと戻ってくる。
「サルはなんとして子犬らを追い返したか」
 上物を被ったままの信長は人の悪い笑みを浮かべ、そう問い掛ける。
「天女様をあないせにゃあならんので、と追い返しましたわ」
 まったく後でねねにこってり絞られることになりますわな、とぼやきながら秀吉は肩を落とした。くくく、と珍しく声を上げて信長が笑い、恨みがましい目でその姿を秀吉は見る。
 確かにこうして紅の上物を被り、目元だけを出している信長はその妹、お市と良く似ている。伏せた睫は長く、目は切れ長で、天女と例えたものあながち間違いではないのぅと、そんな事をこっそりと秀吉は胸の内思ったりした。ぼうっと信長に見惚れていた秀吉は、急に立ち上がった信長の姿に我に返る。
「ではそろそろ戻られますか」
「サルの番は終わったようであるな、次は信長の番、ぞ」
「へえっ?」
 ばさりと落とした紅い上物を手にした信長が、問答無用の強引さでその衣を使い秀吉をくるむ。頭から簀巻き状態にされて混乱している間に、そのままひょいと肩に担ぎ上げられた。と、その次の瞬間、簀巻きにされたままの秀吉の耳にばたばたと幾人かの足音が飛び込んでくる。
「お探ししましたぞ」
「どこに行かれたかと」
「早くお戻りを」
 足運びからして武士の類が数人。口々に信長の身を案じている処からして、織田家中の物であろう。ん、じゃあなんぞわしが隠されにゃあならん理由なんぞあるんか?そう秀吉が疑問に思ったその時。
「まだ戻らぬ。これなる遊び女との約束があるゆえ、な」
「!!!!!!」
 はぁっ??と否定の声を上げようとした秀吉の喉元を、上物の上から器用に探り当てた手がぐっと押さえる。自然息が詰まって、声を上げるどころではない。
「先に一分銀を受け取っておいて、今更嫌とは言うまい、ぞ」
 ありゃあわしが受け取ったんじゃありませんってと、胸の内で叫んでみてもそれは声にはならない。ばたばた動く足先だけが、秀吉の心境を表していたが、供の者には絶妙な角度で隠されて、それは気づかれることがなかった。
 言い出したら聞かぬ信長の性分を知っていある供の者達は、仕方なしと言った諦めの体で、待たせて頂きますと告げ、路地裏残っているようだ。悠々といったふうに肩に秀吉を担いだまま、信長は路地裏で灯りを灯す店先へと入ってゆく。この場所にある店がどのような用途の店か、それは秀吉も知りすぎるほど知っている。そのような店だ。
「観念せよ、サル」
 担がれたまま往生際悪くもがいていた耳元に上物越しに低く、そう呼びかけられる。笑いを含んでいる、面白がっているようなその声。結局はこれですべて許してしまうのだ。いつもの事なのだ。
 諦めた秀吉の体からはぐったりと力が抜けて、はぁ、と遊び女の白粉臭い上物越しに息を吐く。
「かしこまりて、ございます」
 結局は、いつものごとく。それでもそれが嫌ではないのだから仕方がない。そういうことなのだ。








 重い身体をようようと起こし、外を伺えばもうすっかり日は高くなっている。昨夜と言うよりも今朝、いつのまに日が登ったのか、その記憶すらすっぽりと抜け落ちている。
 強ばった肩をぐるぐると廻し、秀吉が傍らを見ると当然ではあるが、もう信長の姿は無かった。本当にあの方は何をしに来られたのやらと、大きく息を吐く。
 そろそろわしも帰らにやぁなあと、秀吉は重い身体を引き上げて立ち上がる。朱い上物がその拍子にさらりと肩を滑って、昨夜からそれを羽織ったままであったことを思い出した。興が乗った信長が昨夜それを脱ぐことを許さなかったのだ。
 残されたその衣をどうしたものかと、秀吉は思案する。と、ふと目に留まったのはその衣の袖だ。なにや墨で書かれた文字のようなものが見える。確か昨夜はこんなものは無かった筈で、不思議に思った秀吉はその文字に顔を近付ける。

 紅の 薄染め衣 浅らかに 相見し人に 恋ふる頃かも

 この癖のある筆跡は間違いなく信長のものだ。この状況で残されるのはどうなのかと言わざるを得ない歌に、秀吉の疲れはどっと増す。終始上機嫌であった信長なりの悪ふざけ、と言うことなのだろう。あくまで昨夜共に過ごしたのは銀を与えた遊び女であると、そういうつもりなのだ。しかしそれでもこれは歴とした恋の歌である。そう思えばなにやら気恥ずかしく、一人秀吉は俯いて赤面してしまう。
「まったく、あの方にゃあかなう気がせんわ」
 一人呟いて、暑い顔をぱたぱたと手で扇ぐ。まったくもって、かなう訳がない。当然だ。なにしろ出会ったその時から、相見し人に恋ふる、のは自分の方だったのだから。




 その後、例の上物がどうにも処分できず、こっそりと持ち帰った秀吉が、白粉くさいとねねにバレて大目玉を食らうのはまた別のお話。










雷電五郎様に捧げさせて頂きました!
お誕生日おめでとうございます!!

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